コロナ禍により、対面で出会う価値と意義を再認識〜 会議を開催できる環境づくりに全力を尽くす 〜
2021/3/31

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コロナ禍の中、オンライン会議も増加していますが、ビジネス活動におけるコミュニケーションの重要性は普遍的なテーマです。とりわけ、対面により議論を深めていく「会議」は最も重要なコミュニケーション手段といえるでしょう。
今回は、展示会と会議の企画・運営に20年以上の経験を持つ会議開催のプロである公益財団法人 大阪観光局 MICE政策統括官 田中 嘉一さんに対面で出会う価値と意義、会議を開催する上での環境づくりについてお話を伺いました。

コロナ禍で大きく打撃を受けたMICE。それに対する私の「反応」

私の肩書きにもあるMICE(マイス)という言葉は、Meeting(会議)、Incentive(報奨・研修旅行)、Convention(学会・国際会議)、Exhibition(展示会・見本市)の頭文字をとった言葉であり、いわゆるビジネス・ミーティングの総称です。私は2025年の大阪・関西万博、さらにその先にあるIR(統合型リゾート施設)の誘致を見据え、大阪におけるMICEの開催を増やし、大阪に大きな経済効果をもたらすための戦略策定と実行を任され、2020年4月に東京から大阪に赴任して参りました。
しかし、着任時はまさにコロナ禍の真っ只中。正直、「とんでもない時に来てしまったな」という思いが頭をよぎりましたが、すぐに考えを切り替えました。私は大規模な国際見本市を主催する事業に23年間携わってきたのですが、その時も、SARSや東日本大震災により、あらゆるMICEが中止や延期に追い込まれた経験をいたしました。そんな中、多くの方々のお力添えにより、いずれも日本で最初にMICEを復活させることができた経験を二度も有しております。従って、「今のコロナ禍でも、私が自分の経験を生かして最初にMICEを復活させる使命が課せられているのかもしれない」と考えたわけです。さらに、「今回は大阪だけでなく世界中が等しく被害を受けているわけだから、必要以上に落ち込む必要はない。むしろ大阪が最初に復活できれば、世界の中で大阪がフロントラインに立てるチャンスになるかもしれない」と自らを奮い立たせました。

MICE主催者を勇気づけ、開催を決断してもらうために、ガイドラインを作成

そこで私が着任してすぐに取り組んだのが、「感染症のリスクを抑えながらMICEを開催するためのガイドライン」の作成です。感染症の専門家のアドバイスを参考にしつつ、同じ呼吸器系の感染症であるSARSでの経験も生かし、コロナ感染症対策をどのように施せばいいかの具体的ポイントは数日間でまとめることができました。
しかし、私がガイドラインを作成した真の目的はここにあるのではなく、ガイドラインの最初の2ページに、「MICEは経済活性化に重要だから、ぜひ積極的に開催してほしい」という趣旨の文言を、大阪府、大阪市と調整してまとめ、発表することにありました。すなわち、「MICEを開催して構わない」とのお墨付きを主催者に与えたかったのです。これこそMICEの主催者が何よりも望んでいることであり、この文言があったからこそ、多くの主催者が「よし、やはり開催してみよう」と開催を決断してくれることになりました。大阪観光局のウェブサイトで公開されているガイドラインを是非ご参照ください。
https://mice.osaka-info.jp/page/mice-guideline

さらに私は、ガイドラインの作成だけでなく、目に見える形でMICEを再開させることが、大阪全体、日本全体を刺激し、MICEの復活につながると確信。そのため、大阪府が協力、大阪観光局が後援する「関西ホテル&レストランショー」という見本市を、ガイドラインに基づいた運営を主催者とともに構築しながら、2000年7月にインテックス大阪で開催しました。
これが緊急事態宣言後、日本で再始動したMICEの第一号です。会期中は日本中のMICE関係者300名ほどが見学に来られ、コロナ禍における運営方法を学んでおられました。そして間も無く、名古屋、東京、横浜・・・と、MICEの再始動が次々と他都市にも波及しました。すなわち、現在、日本中で行われているMICEの感染症対策は、大阪のこの展示会で創られたわけです。

久しぶりに展示会に参加した多くの人々から、「やっぱり対面でお客さんと話せるのは効果的だ」「出展者と直接話せるので、商談が早く進む」という明るい声が寄せられ、私は「やはりMICEは対面での開催じゃないとダメだ」と確信を深めました。

対面のコミュニケーションは人間の「本能」

もちろん、コロナ禍で人との接触を避けることが強く推奨される中、オンライン会議も増加していることも認識しております。しかし、やはり私は飽くまでもリアルでの、対面でのMICEの開催を追求しています。その理由は、face to faceのコミュニケーションは人間の根源的欲求のようなものであり、ビジネス活動の根幹だと思うからです。例えば以下のような価値は、オンライン技術で代替するのは困難です。

●商取引・購買 (手で触って、確かめてから、買いたい)
●成長、イノベーション促進 (大勢の聴衆の前で発表して認められたい)
●確かな人脈構築(高額商品の取引、新規取引など信頼関係を構築したい)
●感動・体験 (face to faceはオンラインを圧倒的に凌ぐ情報量)
●非日常空間 (日常の業務から切り離されて、集中して参加したい)
●相互理解、協調、連帯したい(ライブイベントなど、仲間と一緒に楽しみたい、同じコミュニティであることを実感したい。好きなものに囲まれたい。)

以上のような貴重で究極的なコミュニケーション手段を、人類は易々と手放すようなことはしないと私は確信しております。さらに言えば、巣ごもりになり、オンライン技術でのコミュニケーションを長期間強いられてきたことにより、コロナ禍による死亡者よりも、自殺者が上回るという問題が指摘されるようになるなど、様々な分野で歪みが起き始めており、多くの人が「巣ごもり一辺倒ではマズイのではないか」とようやく気づき始めています。

ガイドラインを守った運営を心がければ、感染リスクはかなり低減できる。 ビジネス上 必要な会議は「気を付けながら」開催すれば良い、と考えよう。

感染症の専門家とも継続的に意見交換を重ねておりますが、はっきりしていることは、100%完璧な対策は無い、ということです。すなわち、ゼロリスクはあり得ないということを冷静に受け止めることが必要です。したがって、「社会経済活動を止めなくても良い社会システム」を目指していくことが極めて重要だと強調したいと思います。我々の命を支えるのは医療ですが、社会経済活動もまた、命を支える重要な役割を果たしているからです。

私は当初から、新型コロナウイルスの対策は、自動車の運転に例えて捉えています。自動車を利用する以上、事故がゼロということ(ゼロリスク)はありませんね。だからこそ、我々は交通ルールを作り、急発進、急ハンドル、急ブレーキというリスクの高い行為(コロナ感染症に例えると、三密ならぬ三急ですね)を避けるように「気を付けている」のです。
コロナについても、リスクの高い行為を避けようと「気を付けている」状態を継続している限り、感染するリスクはかなり低減できると感染症の専門家は指摘しています。

ビジネス向け会議は、参加者はビジネスマンであり、感染症対策のルールをしっかり守り、大声をあげて騒ぐなどのリスクが高い場面はありません。つまり、感染症にかからないよう「気を付けている」状態が保たれている場合がほとんどであり、感染リスクは極めて低いと思います。従って、必要なビジネス活動であるならば、対面コミュニケーションのメリットがリスクをはるかに上回りますので、会議は通常通り開催して良いと私は考えております。

このサイトをご覧の方は、何らかの会議を開催する方だと思いますので、皆さんにはむしろ、せっかく集まってくれた参加者が今まで以上に満足するような、充実した会議内容、対面コミュニケーションの意義を感じられるような工夫を凝らしていただきたいと思います。

皆様が必要な会議を気兼ねなく開催し、対面会議のメリットを享受できるような風潮を醸成していくために、私のような公的組織の立場の者が、できる限り社会経済活動を回す姿勢を示す必要があると考えております。今後も皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

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田中 嘉一
公益財団法人 大阪観光局 MICE政策統括官
展示会・見本市コンサルタント、地域活性化コンサルタント
アフターMICE・デザイナー、広報プランナー/スピーチライター

【概要】
東京大学1年在学中から約7年間にわたり、学習塾と旅行会社の経営に参画。
その後、日本最大の国際見本市主催会社、リード エグジビション ジャパン(株)にて、出展勧誘営業、専門セミナーの構築・運営、社内システム、広報の責任者を務め、2010年に取締役、2013年に常務就任。管理部門を統括する会社のナンバー2として社業発展に力を尽くした。
また、国内最大の業界団体である日本展示会協会の会長補佐も務め、政府・自治体・経済界への助言やロビー活動、展示会の重要性を啓発するための講演活動等を精力的に行った。
現在は自治体や企業のMICE振興アドバイス、地域活性化の支援事業に力を注ぐ。「日本各地が互いに競争して地域の魅力を開発し、発信し続ければ、日本はもっと面白い国になる」が持論。

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