会議はコミュニケーションの場、大事にしたい原則とは?
2021/4/13

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会議では、どのような形式であれ、会議を実りあるものにするためには、コミュニケーションが重要です。今回は、「マネジメント」や「プロフェッショナル」などの有名な著者であるドラッカーのコミュニケーション四原則の中から最も大事な「コミュニケーションは知覚である」を意見や考えを引き出す取材のプロ『月刊総務』の編集長 豊田健一さんに説明してもらいましょう。

会議の場はコミュニケーションの場

会議の形式には、様々なモノがあります。報告がされるもの、テーマに沿って討議されるもの、自由にブレストが行われるもの、大事なプレゼンテーションが行われるもの。形式はともかく、そこでおこなわれるものは対話であり、コミュニケーションです。会議では、どのような形式であれ、コミュニケーションがベースとなって成立するのです。

となると、会議をうまく進行させるために、あるいは、会議を実りあるものにするためには、コミュニケーションについて理解しておくことが大事ではないでしょうか。そこで、今回はコミュニケーションの原則についてご説明していきましょう。

かのドラッカーが、コミュニケーションについて四つの原則を提示しています。
①コミュニケーションは「知覚」である
②コミュニケーションは「期待」である
③コミュニケーションは「要求」である
④コミュニケーションは「情報」ではない

この中から、今回は、最も大事な「コミュニケーションは知覚である」を説明していきましょう。

ロシア語が分からない相手にロシア語で会話しますか?

ドラッカーはこのような例えを使って説明しています。自分はロシア語で会話できたとしても、相手がそれを解さなければ、ロシア語での会話ではコミュニケーションは成立しません。自分はロシア語が分かるが、相手はロシア語が分からない。ロシア語についての自分と相手との相違を意識しないといけない。だから「コミユニケーションは知覚である」と言っているのです。

「そんなことは当たり前!」、そのように思われる方がほとんどでしょう。 ロシア語分からない相手にロシア語でコミュニケーションはしないはず。確かに、これは誰にでも理解できる例えです。しかし、経営トップが社員にメッセージを発信する。広報部門が社内報を発行する。開発部門が営業部門に依頼する。このような日常のなにげない場面においても、この言葉を意識していないことで、コミュニケーションの不成立が生じているのです。

そもそも、自分と全く同じ人間はこの世に存在しません。全く同じバックグラウンド、同じ考え方、同じ情報リテラシーを持っている人間は存在しません。そして、コミユニケーションにおいては、2人以上の人間の存在があります。だとしたら、コミュニケーションにおいては、常に相手との相違を意識しなければならないはずです。

目線の違い、保有情報の違いが意識されない

先に記した、経営トップが社員にメッセージを発信する際、どうしても経営トップ目線になってしまいます。経営トップと社員では見ている世界が大きく異なります。考えていること、問題意識も全く異なります。持っている情報、触れている情報に歴然たる相違があります。

この違いを意識して経営トップはメッセージを発信しないと、社員は理解できません。見ている世界が違うので、追い付いていけないのです。たとえ理解できたとしても、自分の身に置き換えて具体的な行動をイメージすることができないはずです。良くある「総論賛成、各論意味不明」状態に陥ってしまうのです。

この例もまた、「そりぁ、そうだろう!」と理解しやすいものかもしれません。しかし、次に記した例、管理部門が社内会議で新たな社内制度について説明する場合。この事例ではどうでしょうか? 実際に多くの管理部門の担当者が「コミュニケーションは知覚である」を全く意識せずに、説明会資料を作成しています。結果として、読まれない、理解されない、そして行動に結び付かないものになっているのです。

中枢部門と現場との情報格差が意識されない

管理部門のメンバーは、一般的に経営の中枢部門であるはずです。そこでは、毎日のように高度な情報がやり取りされ、また、経営層と日常的に接する部門でもあります。最新の情報シャワーを常に浴び続けている人たちです。

一方、現場の社員は目の前の仕事に忙殺され、その仕事を対応するのに必要な情報にしか触れていな場合もあります。 日常的に経営層と接点があるということはまれな事でしょう。偏った、範囲の狭い情報シャワーしか浴びていないケースもあります。

この場合、管理部門のメンバーの目線で作成した社内資料が、果たして現場の社員に理解できるでしょうか。確かに日本語が読めれば、なんとなくは理解できるでしょうが、経営用語や専門用語を駆使されては、その理解もおぼつかないことになるでしょう。

いわんや、共感されることはほとんど不可能ではないでしょうか? そもそも問題意識が異なり、見ている世界が違えば、自分事として捉えることはないでしょう。関係性が認知できない限り、当事者意識を持って共感することはあり得ません。結果、コミュニケーションを取ろうとする者の意図に適った行動を、コミュニケーションの相手側がとることはないでしょう。

現場、例えば、営業部門から管理部門に異動して、社内資料を作成する場合、当初は、今まで所属した部門のメンバー目線で作成されることでしょう。「現場にいたころ、社内資料は難しくて理解しにくく、全然読まなかった。だから、自分はなんとか現場目線で企画立案し編集して、現場に読まれるものにしたい!」、このような意気込みで始めるのですが。しばらくすると、管理部門の目線になってしまい、現場目線から外れてしまっていく、このようなケースが実際のところでしょう。このように、相手との相違を意識して、相手の目線でコミュニケーションをするということは、相当意識的に行う必要があるのです。

相手を知ることからコミュニケーションは始まる

コミュニケーションにおいては、コミュニケーションの受け手に主導権があります。どんなに相手のことを考えてコミュニケーションをしたとしても、相手が「分からない」と言ってしまえば、コミュニケーションは成立しません。

こんな禅問答のような問いかけをドラッカーはしています。
「 無人の山中で木が倒れたとき、音はするか? 」
「 否。 誰も聞かなければ、音は無い 」
聞く者がいなければ、コミュニケーションは成立しない
コミュニケーションを成立させるものは、受け手である。発する者ではない

意味するところは、コミュニケーションを発する者がいくら頑張ってみたところで、受けてが理解しないことには、コミュニケーションは成立しないということ。ですから、コミュニケーションを取ろうとする場合、相手の状況を良く把握することが前提となります。相手の関心事や問題意識、情報量などを把握して、それを前提にコミュニケーションをするのです。ドラッカーの言うところの、「コミュニケーションは知覚である」、自分と相手との相違を知ることがコミュニケーションを成立させることに繋がるのです。

コミュニケーションは相手により成立する。であるなら、相手が理解できるようなコミュニケーションにする。であるなら、相手に合わせたコミュニケーションにする。よって、相手に合わせるのであれば、相手のことをより深く知ることが必要となる。ということになるのです。

「コミュニケーションは知覚である」。会議において、常に意識しておきたい言葉ですね。

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豊田 健一
株式会社月刊総務 – 代表取締役社長 『月刊総務』編集長

月刊総務は、株式会社月刊総務から刊行されている月刊誌です。
その名の通り、企業の総務部門の業務に関する記事を掲載しているユニークな雑誌で、複雑化する業務に対応して旬な情報や総務業務の考え方、有用なサービス、専門家コラムなど、総務、人事の仕事をサポートするコンテンツが様々な切り口から分かりやすく解説されているのが特徴です。

【概要】
株式会社リクルート、株式会社魚力で総務課長などを経験。現在、日本で唯一の管理部門向け専門誌『月刊総務』を発行している株式会社月刊総務の代表取締役社長、『月刊総務』の編集長。一般社団法人FOSCの副理事長や、All Aboutの「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。

専門分野/講演テーマ例
<総務業務分野>
総務部業務全般のコンサルティング
総務の在り方、総務のプロとは、戦略総務の実現など

<営業分野>
総務部向けの営業に関するコンサルティング
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