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活用事例

主体性を高める為の「コーチング」という関わり方

2021/5/6

主体性を高める為の「コーチング」という関わり方
前回のコラムでは、主体性と自主性の違いや、主体性を持つメリット、身に着けるためのポイントを紹介しました。主体性と自主性の決定的な違いは、やるべきことを自ら考えるか与えられるかという点です。自ら考えられる主体性を身に着けた人は、チームや社会から広く必要とされ、老後も自ら考え稼ぐことのできる人になる可能性が高くなります。
そんな主体性を身につける為には、投げかける「問い」が重要であることとお伝えしました。
今回のコラムでは、相手の主体性を引き出す為に必要な「問い」や指導方法、持つべき意識について、さらに詳しく紹介していきます。

ティーチングとコーチング

主体性を引き出す指導方法について説明する上で欠かせないのが、ティーチングとコーチングという手法の使い分けです。

ティーチング(教授)=自主性

ティーチングとは、「ティーチ:teach(=教える)」という意味の通り、「自分が持っている知識、技術、経験などを相手に教えること」です。指導者側が見本や答えを持っており、それを相手に伝授するという意味合いがあります。
ティーチングの主な手法は、アドバイスをすることです。
「アドバイス」と聞くと、指導する際に効果的であるという印象を受ける方も多いのではないでしょうか。
知識や技術を教えるという目的では、ある一定のレベルまではアドバイスは有効です。 しかし、アドバイスは、指導者が持っている知識や技術の内容に限られる為、指導者が知らないことを教えることができません。 また、アドバイスの内容が、相手のできることであるとは限らず、指導者がアドバイスをしても、役に立たなかったり、苦痛や混乱を伴うケースもあります。
これらのことから、私の専門であるコーチングの世界では、アドバイスによって相手の行動が変わる確率は30%と言われています。

次の例をみてみましょう。

サッカーの試合中です。
ボールを持っている選手に、ディフェンスがついています。
右斜め45度に味方がいて、そこにパスを出したいけれど、その味方にもディフェンスがついています。
ボールを持っている選手は、「ボールをキープしなきゃいけない」「ディフェンスを気にしないといけない」「味方を探さないといけない」など、色々な事を考え、平常時よりもかなり視野が狭まっている状況です。
左サイドにディフェンスのついていない味方がいますが、選手からは見えません。
ベンチからは「左にパス出せー!」と声が上がります。
ベンチの人は選手を取り囲む全ての状況が見えていて視野が広く、プレッシャーもないので、アドバイスを送ります。
しかし選手は視野が狭くなっていて、気にすべきことも沢山あります。
そんな状況で、自分の見えない所のことをアドバイスされてもパニックに陥ります。


自分が見えている(出来る)ことが相手も見えている(出来る)とは限らないということが、この例から分かります。
指導者の見えている(出来る)ことを相手に伝えるのがアドバイスなので、それを主な手法としたティーチングだけでは、相手の行動を変えるには、十分ではありません。
アドバイスにもある一定の効果はありますが、それ一辺倒では未完成で、まだまだ伸びしろがある状態なのです。

コーチング(指導)=主体性

一方、コーチングは、基本的に「教える」「アドバイスをする」ということはしません。
コーチングの主な手法は、対話をすることです。
アドバイスのように、見本や答えをこちらから提示するのではなく、問いかけて聞くという「対話」を通して、相手自身からすべき行動や考えを引き出します。
最終的にすべき行動が同じ場合でも、指導者から与えられたものなのか、自分の内側から導き出されたものなのかで、本人の取り組む姿勢や行動に大きな差が生まれます。
自ら気づいて、自発的な行動に導くのがコーチングなのです。

指導者の意識の違い

ティーチングとコーチングでは、指導者の意識に違いがあります。
ティーチングは、相手が「出来る」ことが前提です。アドバイスをして、それができなければ、「なぜできないのか?」という心境になり、指導者は負の感情を抱くこともあります。
一方、コーチングは、相手が「出来ない」ことが前提です。出来なくて当たり前なので、出来なくても負の感情は生まれることはありません。
逆に、できた時に「素晴らしい!」と、ポジティブな感情が生まれ、指導者も相手もモチベーションが高くなり、お互いが前向きな感情を抱きやすくなります。
こういった意識の差が、行動に繋がるのです。
意識の差について、次の例を見てみましょう。

皆さんも、実際にやってみてください。
両腕を前に真っ直ぐ伸ばし、「前にならえ」のポーズをします。
右腕のみをそのまま残し、左腕はおろします。
意識をするポイントは「腕の付け根は肩」です。
意識する視点を「」に当ててください。
次に、その右腕を、地面と水平を保ったまま右後ろにぐーっと開いていった時、どこまで開くかを鏡で見てみてください。

それでは、腕を降ろしてください。

ではもう一度、右腕を前に伸ばします。
今度は、「腕の付け根は肩甲骨」という意識でやってみてください。
意識する視点を「肩甲骨」に当ててください。
先程と同じように右腕を、地面と水平を保ったまま右後ろにぐーっと開いていきます。

腕を降ろしてください。


さて、一回目とニ回目で何か変化はありましたか?
二回目のほうがより後ろまで開いたのではないですか?
私は、ニ回目の時に「より開いてください」とは一言も言わず、ただ、意識するポイント(視点)を変えただけです。
意識を変えると行動が変わるということが体感できたと思います。
このことは、ティーチングとコーチングで指導者の意識が違うことにも通じます。 出来ることが前提の意識であるティーチングと、出来ないことが前提の意識であるコーチングでは、指導の仕方が変わってくるのです。

アウトプットまでやらなければ意味がない

人は学ぶ時、情報を得ます。これを「インプット」と言います。
次に、インプットしたことを頭の中で処理します。これを「スループット」と言います。 さらに、情報を得て(インプット)処理した(スループット)ものから、何かを創り出したり、発信したりします。これを「アウトプット」といいます。
大抵の人はスループットまではできています。しかし、それをアウトプットしなければ、ただ頭の中でイメージしただけで、何も変わりません。
アウトプットといっても、独創的なものを創り出すというような難しいことではありません。「問い」に対する「返事」を言語化すればいいのです。
イメージしたものを外に出す(アウトプット)ことが、主体性を身につける為の近道となります。
指導者はコーチングという関わり方で、相手のアウトプットを増やすことが大切な関わり方になります。

主体性を引き出す為の質問集

次の問いを繰り返すことで、考えることが習慣化され、主体性を育むことにつながります。
考え方やとるべき行動に迷った時は、ぜひチェックしてアウトプットしてみてください。

1.今、一番取り組みたい目標は何ですか?
2.いつまでに、どんな形になればいいと思っている?
3.中間ステップには何がある?
4.どんなプロセスをたどれば、ゴールに着く?
5.解決したい問題点はなに?
6.1年後の成功のイメージは?

7.問題をつくっているあなたの原因はなに?
8.それについて、いつもどれくらい考えているの?
9.あなたにとってその問題は、どれくらい重要?
10.本当?
11.他には?
12.精神的な要因はなに?
13.外的要因はなに?
14.現状だと、何パーセントの確率で達成できる?

15.問題を解決する方法はなに?
16.すでに持っている資源はなに?
17.サポートしてくれるとしたら誰がいる?
18.他には何ができる?
19.あなたが私だったらどうすると思う?
20.他に必要なものはなに?

21.どれからやることが一番効果的かな?
22.いつから始める?
23.実際に行動に移す確率は現在何%ですか?
24.何があったらもっと確実になる?
25.私があなたをサポートするとしたら何がある?
26.ゴールに進んでいるのを何で測る?
(出典:株式会社コーチセブンピース)

まとめ

主体性を身につける為にはコーチングという手法に倣って、問いを投げかけ、アウトプットを促すことが大切です。
指導する際や、自分自身の行動を決めるときに、上の26問の質問集を参考にしてみてはいかがでしょうか?
それと併せて、まずは日頃からポジティブな言葉を使って過ごすことを意識してみてください。
至らなかったことを振り返って「反省」するのではなく、これからの「課題」だと捉えるほうが、次に行動しやすくなります。
意識を変えれば、行動が変わります。
残念ながら、主体性は一朝一夕では身に付きません。
ポジティブな意識と、問いの投げかけ、アウトプットすることを繰り返して、コツコツと身に着けていきましょう。

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藤井久志さんプロフィール
教育デザイナー&コーチ
コミュニケーションアドバイザー
愛知県 豊田市在住
https://sportscoaching.jp/sc0004/

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